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2020.09.19 Saturday

この機会に1976年の旧作も配信してほしい。父との思い出のある映画『ミッドウエイ』の新作は見事な「THE・アメリカ戦争映画」だった。

『ミッドウェイ Midway』 

監督:ローランド・エメリッヒ 2019年 アメリカ・中国・香港・カナダ 138分

 

アメリカ映画『ミッドウェイ』が観たくなってTOHOシネマズ池袋に行きました。

今ではあまりこういう映画はわざわざ観に行かないけれども、実は理由がありました。

本当は、せっかくだから大きなスクリーンで立体音響のようなシステムで観ようと思ったのですが、9月18日からクリストファー・ノーランの新作『テネット』が公開されて、大きなスクリーンは軒並み『テネット』になってしまいました。出来て間もないTOHOシネマズ池袋にも行ってみようと思っていたので、仕方なく76席の一番小さなスクリーンで観てしまいました。とは言ってもTOHOシネマズですから、シートも快適だし、スクリーンも大きい。音も十分に楽しめました。

 

実は、1976年の『ミッドウェイ』は僕が中学生の頃に、父親と観に行きました。中洲の大きな映画館だったはずです。当時は「センサラウンド方式」という新しい音響システムが導入されて、『大地震』というパニック映画では、重低音で椅子の揺れを感じたのを覚えています。この頃は、エアポート・シリーズとか『タワーリング・インフェルノ』とか『サブウエイ・パニック』とか、もちろん『ジョーズ』とか、そういうパニック映画が随分と流行っていましたね。サメだけではなくて蜘蛛とかタコとか虫とか、巨大な生き物に襲われる映画も流行りました。僕が中学生から高校生にかけては、アメリカ映画や便乗外国(イタリア映画がそうだった)映画はそういう状況だったんです。もちろん他の映画もあったでしょうが、中洲の映画館ではアメリカ映画のロードショーが主流でした。

父は予科練で終戦を迎えていて、「後3ヶ月戦争が延びたら特攻に出る予定だった」と話していました。時々、予科練の話もしていました。小柄だった父は、支給された制服や訓練服がぶかぶかだったそうで、当時の教官からは「貴様らに合わせた服は無い、服に体を合わせろ!」と言われたそうです。また、海軍精神注入棒で気合を入れられたそうですが、話を聞くと殆ど理由のない暴力で、ただ、眠れないくらい痛いケツバットだったそうです。そんな父が『ミッドウェイ』を観たいと言ったものですから一緒に行きました。観終わると色んな話をしてくれたのですが、殆ど覚えていません。おぼろげに覚えているのが、南雲中将の判断ミスが大きく戦局を変えたというようなことだったか。これは2019年の『ミッドウェイ』でも描かれていますが、アメリカ艦隊の待ち伏せに気が付かずに、ミッドウェイ島の陸基地を攻撃するつもりだった南雲は、戦闘機に搭載する爆弾を「魚雷」から「陸地爆撃用」、また「魚雷」に積み替えて、発艦の時間が遅れたというものです。しかし、もしもこの時の日本の連合艦隊が勝利して、アメリカ軍に相当な痛手を与えていたら、いずれそうなった敗戦の日はもう少し後になって、父は特攻で飛んでいたかもしれませんね。父親が14歳の頃、ミッドウェイ海戦のことは、きっと「勝った、勝った、のデマ戦果」を大本営発表で聞いていたでしょうから、軍国少年の志は高まっていったのだと思います。

 

1976年の『ミッドウェイ』はアメリカ建国200年記念映画とも言われていて、多分にプロパガンダも含まれていたでしょう。しかし、2019年はどうか?

古いパンフレットを読み返していると、1976年版はたしかに当時のアメリカ映画を支える大スターが集結していました。ヘンリー・フォンダ、チャールトン・ヘストン、ロバート・ミッチャム、ジェームズ・コバーンといった布陣で、山本五十六は三船敏郎です。三船だけは監督の意向で決まっていたそうで、他の日本人は南雲中将のジェームズ・繁田など、すべて日系の俳優たちでした。

ストーリーでは、もちろん大筋は史実なので変わりませんが、描かれる中心的なキャラクターが随分と違います。チャールトン・ヘストンが演じたガース大佐は、息子トムが日系人の女性(佐倉春子)と恋に落ち、逮捕されている彼女の両親の釈放を父に懇願したり、その春子がスパイの疑惑があるとFBIから連絡上がるなどというエピソードは登場人物も含めてまるごと無い。かわって2019年版の中心は、真珠湾奇襲攻撃で大切な友人を失い、復習に燃える勇敢なパイロット、ディック・ベスト大尉で、ベストが1日の攻撃で2艦の空母に爆弾を命中させ、戦局を変えた英雄であることが、この映画の全てであると言ってもいい。したがってこの映画は真珠湾攻撃から導入しなければならない。奇襲攻撃によって甚大な被害を受ける真珠湾を導入部で描く。ディック・ベスト大尉は、粗野で無謀だが勇気ある優秀なパイロットで、日本の空母に爆弾を落とすことが友人の弔いだと思っている。映画の方向は決まったようです。一方で、76年版でも重要視されている暗号の解読には、ベストと対象的な情報主任参謀エドウィン・レイトン少佐が描かれます。真珠湾のエピソードより先に、日米開戦の前に、レイトンが日本に駐在していて、山本五十六と親しかったことが描かれます。レイトンは情報参謀として日本の動きを予測しますが、山本と親しかったことから、日本軍の動きを予測せよという流れです。暗号解読が15%程度の精度であることや、日本軍の陽動作戦ではないか、といった不安が判断を鈍らせます。レイトンとベスト、この二人の対象的なキャクターがこの映画の中心です。

 

もちろん、かつて今野勉さんが『ルーズベルトは知っていた』というドキュメンタリー番組で指摘したように、真珠湾攻撃の情報はアメリカ軍には掴まれていたというのが史実のようです。中立だったアメリカが参戦するにはそれなりの強力な理由が必要で、そのためには「自衛のため」あるは「やられたらやり返す」というのが一番強力です。真珠湾を犠牲にしたのかといえば、そうだったのかもしれません。

これを機会に旧作の1976年版も公開か配信してくれると、もう一度観て詳しく比較したいところです。アメリカ軍のプロパガンダ映画を撮っていたジョン・フォードがちょびっと出てくるのも面白いですね。

 

 

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