<< 映画作家・大林宣彦さんは壮大な「個人映画」を作ったのだと思う。 | main | 「食べ合わせ」という言葉があるが、映画にもたまたま巡り合った順番というものが確かにあると思う。 >>
2020.08.24 Monday

映画は情報の合理的な羅列ではないということを、あらためて気づかせてくれたこの映画は、いくつかの解らなさを「推して知るべし」と言っているようで嬉しかった。

『はちどり』

原題:House of Hummingbird 監督・脚本:キム・ボラ

2018年 韓国・アメリカ 138分

 

81点くらいの映画が好きだ。残りの19点はたぶん、僕にはわからない魅力としてとっておきたい。不思議な既視感はエドワード・ヤンだろうか? 映像の連続が何かの解決には向かわないそんな曖昧さを纏っていて、とても心地よい。例えば映画の半ばから気になって仕方のない女性教師ヨンジは、最後まで何も教えてはくれない。それでも、この映画に大きく貢献をしているのは、その解らなさが映画の中で魅力的であるからだ。

主人公の少女キム・ウニはもちろんそんな解らなさをずっと持ち続けている。感情の不安定さとか、思春期の揺らぎとか、そういう言語化出来る何かではなくて、行き場のない感情を家族を配慮しながら抱え込み、それでもどうしても溢れ出るさまは、それだけで愛おしい。

1994年の半年くらいを背景に持ち、金日成の死去をニュースで伝えながら、その時期の韓国の動揺はあくまでも、ウニや家族の視線の先にしか描かれていなかった。それが、ソンス大橋崩落で突然目の前の大事件になっていく。子どもたちの僅かだった動揺は、向こうから唐突に近づいてくる暴力的な展開で、忘れることが出来ない事件になっていくのだと思った。

ラストのウニの表情を捉える長いワンカットは、その視線の動きの向こう側に何を見ているのかという疑問しか残さない。それでも美しいのは、視線の向こうなどというものは、本来は描いてはならないものだと言っているようだからだ。

コメント
コメントする








 
Calendar
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     
<< November 2020 >>
翻訳ツール
Facebook svp2ページ 更新情報
Selected Entries
Categories
Archives
Recent Comment
Recent Trackback
Recommend
戦うビデオカメラ―アクティビズムから映像教育まで
戦うビデオカメラ―アクティビズムから映像教育まで (JUGEMレビュー »)
佐藤 博昭
佐藤博昭、渾身の一冊です。個人映像の展開へのヒントになれば…。
Recommend
シリーズ 日本のドキュメンタリー (全5巻) 第1回 第1巻 ドキュメンタリーの魅力
シリーズ 日本のドキュメンタリー (全5巻) 第1回 第1巻 ドキュメンタリーの魅力 (JUGEMレビュー »)
佐藤 忠男,吉岡 忍,森 まゆみ,池内 了,堀田 泰寛,小泉 修吉,矢野 和之,佐藤 博昭
Recommend
Recommend
映画は世界を記録する ドキュメンタリー再考(日本映画史叢書 5)
映画は世界を記録する ドキュメンタリー再考(日本映画史叢書 5) (JUGEMレビュー »)

佐藤博昭が「ビデオ・ジャーナリズムの現在」の項を担当しています。
Recommend
スーパー・アヴァンギャルド映像術―個人映画からメディア・アートまで
スーパー・アヴァンギャルド映像術―個人映画からメディア・アートまで (JUGEMレビュー »)
佐藤 博昭, 西村 智弘, 「Cine Lesson」編集部
SVP2を主催する佐藤博昭の共著本。
Links
Profile
Search this site.
Others
Mobile
qrcode
Powered by
30days Album
無料ブログ作成サービス JUGEM