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2019.02.26 Tuesday

三島由紀夫の美学は、現在の保守や自称・愛国者にはどのように映るのだろうか?

『MISHIMA : A Life in Four Chapters

監督:ポール・シュレイダー 原作:三島由紀夫

出演:緒形拳 坂東八十助 佐藤浩市 沢田研二 永島敏行

1985年 アメリカ/日本 120分

 

昨日(2019.2.24)は、以前購入していたポール・シュレイダー監督の『MISHIMA』を観てしまった。気になって買ってまま、なかなか観る時間がなかったものをこの時期には少し整理できる。観終わって、TV番組に画面が戻ると天皇陛下の在位30年式典が行われていた。別に他意はないのだが、『MISHIMA』のチャプター4は、1970年11月25日の市ヶ谷自衛隊駐屯地での三島由紀夫の演説と、その後の割腹自殺に及ぶ再現部分があって、「天皇陛下、バンザイ!」と叫ぶ、緒形拳の姿が、何度も脳裏に蘇った。三島は本当に「天皇陛下、バンザイ!」と叫んだのだが、腹を切った時には、その目には何が見えていたのだろうか?

三島の文学については熱心な読者ではないので、この映画については様々な批評があっても、どこか遠い作品世界だと思っていたのだが、学生時代に登川直樹先生の解説で『炎上』(1958年)を観たことを思い出し、市川雷蔵の姿を思い出すと、ふと仲代達矢の姿も思い浮かんだ。学生時代の記憶というのは恐ろしいものだと思う。

映画は体験である、というのは、観ることと記憶することの相関には、確実に付帯する体験の細部がまとわりついていて、それが映画の記憶を邪魔するわけではなく、もっぱら映画の細部を連鎖的に喚起することに役立っている。困ったことに、その体験の記憶は時々間違っていて、どこか別の映画と結びついてしまうこともあるのだが、その混乱もまた面白い。こうしてメモをしているのも、証拠を残すという無粋かもしれないけれども、何年か先に読み返してゆっくり楽しもうと思っている。

 

演出の細部については、三島とポール・シュレイダーがどこまで納得していたのかはわからないけれども、移動する「鏡子の部屋」でのセットの背景や、回転する舞台の中心にある屋台で、倉田保昭と横尾忠則が、沢田研二を挟んで論争(と言うほどの論議ではないけれど)する場面など、半ば暴力的に連続される場面の演出がとても革新的だと思ってしまう。ATG的な暴走を、美学で囲い込もうという力技に感心するのだ。

 

三島の国粋の美意識をむしろ滑稽な形で体現した私設の軍隊「楯の会」は、一般的には歪んだ愛国主義の象徴のように理解された。それでも、この反乱を本来の保守の野望と見るならば、笑っているのは、その後に無残な歴史の残滓となる事に無頓着な「左翼」であることが解る。どうやら三島の美学は、この時代の徒花であるように映るけれども、それは、階段教室の席から、一点突破の論理で嘲笑している学生たちとは格が違うようにも見えてしまうのだ。

 

映画は4つのチャプターで構成されていて、それぞれに三島の原作が反映され、独自の演出でその作品世界に分け入っていく。

1.「美(beauty)」 『金閣寺』

2.「芸術(art)」 『鏡子の家』

3.「行動(action)」 『奔馬』

4.「文武両道(harmony of pen and sword)」

 映画『憂国』(1966年 原作1961年)の割腹シーン

 

原作と映画の詳細な関連を論じる力は僕にはないけれども、「散る」という言葉が、少なくとも能動的な意志であることは理解できる。散らされるでも、死なされるでもない命の終い方に、人の営みの美意識を感じることは禁じ得ない。

現在の劣化した保守や、エセ愛国者たちが三島固有の「愛国の美学」を論じることは、もはやないのだろう。

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