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2017.09.18 Monday

スウェーデンの歴史など、実は何も知らなかったのだ。

 

『サーミの血 Sameblod』 2016年 スウェーデン、ノルウェー、デンマーク 108

 

 何故かこのところ、北欧の劇映画を観ている。予告編の連鎖に、つい「良さそうだな」と思ってしまい、まんまとハマってしまったこともあるかもしれないけど、ハマったにしてもとても心地よくハマった。

 スウェーデンと言えば、日本がモデルにすべき社会主義・民主主義・福祉国家(*社会主義と民主主義は矛盾しない。社会主義の対概念は民主主義ではなく、民主主義の対概念は唯神あるいは独裁主義だ。資本主義の対概念が共産主義である。)と言われ、税金は高いけれども福祉が充実している国だという認識がある。北欧の家具などが人気があるが、この国についての無知を痛感する。何も知らなかった。

 ラップランド人、サーミ族のことを今まで目にすることがなかった。映画では1930年代、スウェーデンの先住民族差別の歴史を描いている。サーミ族は、ユーラシア大陸中部から移動してきた民族の末裔だと思うのだが、小柄で体型や顔つきにも特徴がある。大柄な北欧の現代人から見れば、明らかに別の民族であることがわかる。トナカイの放牧などを行っていた移動民族は、かつて劣性の種族であると差別され、「脳が文明に対応できない」という科学的(?)論文もあったという。

 主人公の少女エレは、サーミ族の置かれた立場に絶望する。勉強ができて進学を希望しても、民族として無理だと、憧れていた教師に宣告される。その根拠が、科学的研究成果であり、サーミ族が生きるためには、民族の暮らしと・伝統を守ることだ、と諭される。エレたちサーミ族の子どもたちが、研究のためか身体の特徴を計測されて写真を撮られるシーンが有る。

 スウェーデンの人種差別は、現在ではなくなっているのか? 上映後のトークで、北欧の研究者の大学教授は「現在の問題としては、他国からの移民の課題が重要で、サーミ族は元々のスェーデン人であるという認識になっている。相対的に差別意識は薄れている。」という微妙な発言をしていた。そうなのだろうか、とふと思う。現在的な課題からすれば、サーミ族を源スウェーデン人のひとつ、先住民族として認めてもいいけどね、というニュアンスに聞こえた。実際はどうなのかはわからない。身体的な特徴に対する差別を、教育で乗り越えることは難しいだろうと思う。現にアメリカでは、いまだに黒人差別は消えていないし、日本の朝鮮・中国にたいする差別も同様だ。

 第二次世界大戦で、スェーデンは「中立」という立場を取っていたが、それは、他国がナチスの勢力拡大に巻き込まれる中で、半分はナチスに加担していたようなものだと説明され、複雑な歴史を抱えた国だということを改めて気付かされた。大戦当時、隣接する他国を裏切ったことの後悔が、現在の意識につながっているのだろうか?

 いずれにしても、自国の恥部の向き合った映画であることは間違いない。自国の差別の歴史をきちんと描くことは、日本の事情からは遠い理想のように思われた。

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