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2017.04.25 Tuesday

描かないことで現れる空間の面白さを再認識した映画だった

 

『午後8時の訪問者』 

監督:ジャン=ピエール&ジャック・ダルデンヌ 2016年 ベルギー/フランス 106分

 

郊外の小さな診療所にいるジェニーという若い女医は、やがて大きな病院に勤務するらしい。それまでの間、知人で初老の男性医師の代わりにこの診療所にいることがわかる。診療所には若い研修医の男性もいる。ジェニーがこれから異動する病院の歓迎パーティーに向かう夜に事件が起こる。

 

この映画は、よくわからない事と描くべき細部が絶妙のバランスで点在する。例えばジェニーは聴診器を当てて患者の音を聴く。その音は我々には聞こえないし、ジャニーが何かを感じたことだけはわかる。聞こえないけれども、そのやり取りは細部まで描かれていて、患者と医者とのやり取りは事件の解明のための手段だったことがわかる。ジャニーは患者の微妙な動揺や反応を聴いていた。

わからない事といえば、ジェニーのことはほとんどよく解らない。何者なのか? プライベートな空間もほとんど描かれていない。ストーリーから見えること以上の情報は意図的に隠されている。それは、物語全体の約束事のように機能している。周囲の人物も実はよく解らない人たちだ。患者の少年もその両親も、被害者もその姉も、若い研修医の行動も、そしてこの診療所も、内部は何度も描かれるが、外観もほとんどドアしか現れないし、どこの町なのかもわからない。ジェニーがここを手伝っている経緯もよく解らない。ジェニーが行くはずだった病院も細かいことはわからない。ジェニーと周囲の人達は、こんな絶妙なわからなさに包まれている。その奇妙な空間で、理由の分からない殺人が起こっている。

見終わった後の、不愉快ではない後味の悪さとその不思議な感覚は、演出の策にハマった者が感じる映画的な動揺だと思った。

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