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2016.05.09 Monday

ふたつの「ボーダー」をめぐって


『ボーダーライン 』
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ 主演:エミリー・ブラント
2015年 アメリカ


『オマールの壁 』
監督・脚本・製作:ハニ・アブ・アサド
​2013年 パレスチナ 97分 アラビア語・ヘブライ語


オマールとその仲間たちが、丘の上でジョーク言い合う。どこからか運ばれた自動車のシートに座って。「猿を簡単に捕まえる方法」は、穴の中に角砂糖を入れておけばいいという。猿が中の角砂糖を掴むと手が抜けなくなる。このジョークは、映画を見ている観客に幾度か反芻させる。「簡単に捕まってしまう猿」は誰か? 最後にはオマールに「猿にならない決断」をさせる。
いい映画だった。何が? 映画として本当によく出来ている。観る者が感じる後味の悪さは、この映画が「映画」として回収されることを拒んでいる証左だと思う。
たまたま数日前に観た『ボーダーライン』も期せずして境界を描いた映画だった。アメリカ映画の中では、シリアスな社会問題を扱っていて面白いとは思った。でもそれは、やっぱりアメリカ映画だった。痛みは誰が背負うのか? 主人公の苦悩に集約してしまう脚本は、それでも良く出来ている。だからこそ、「よく出来過ぎている」のだと思う。どうしても、厄介な問題に巻き込まれた正義感を持ったの女性、という落とし所が、観る者を安心させる。
『オマールの壁』にあったのは、どこまでも連鎖する猜疑心が、友人同士の揉め事のレベルではなくなるという事態だ。誰かがスパイかもしれない。それは、どうすれば解るのか? 誰かを囮にしておびき出す。おびき出される。スパイが判った時に何が起こるのか? それが誰であったかによって事態は大きく動いていく。利用される者、取引に応じるもの、応じざるをえないもの、応じたつもりで裏切られたもの、裏切るもの。
具体的にはヨルダン川西岸に築かれた大きな壁が、オマールの精神を分断するのだが、幾つもの壁がそこにはあった。


 
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