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2015.08.26 Wednesday

悲劇や苦難ではなく、戦時下の女性の苦悩として

『この国の空』

監督・脚本:荒井晴彦 原作:高井有一 

詩:茨木のり子「わたしが一番きれいだったとき」

出演:二階堂ふみ 長谷川博巳 富田靖子 工藤夕貴

2015年 130分 2015824日 シネ・リーブル池袋

1945年、終戦が近い頃の東京杉並の住宅地が舞台になっている。戦争の悲劇といえば、肉親の無残な死や理不尽な徴兵、残された家族の苦難が想定されるのだが、この映画は静かだ。里子と母は父親を失い、残された家で空襲に怯える日々を過ごす。しかしその食卓は、よく目にする戦時の食事と比較すればまだ、ましなことが解る。隣人の銀行員・市毛はバイオリンを引くことを趣味としていて、新聞記者の知人から、リアルな戦況を得て、冷静に振る舞う。この市毛や奥田瑛二演じる隣人の服装を見ても、都心の豊かな勤め人が済む地域だと解る。爆心地や疎開先ではない、合わばありふれた中流家庭の戦時下の様子が、淡々と描かれていて心地よい。

二階堂ふみが演じる里子の言葉遣いを何処かで聞いたことがある気がしていた。誰だっただろう? 途中で思い当たったのが原節子だった。当時の東京の、下町ではない場所で育った言葉だろうか? 妙に落ち着いた言葉の調子が懐かしくもある。工藤夕貴はエンドクレジットが出るまで、そうだとは気が付かなかった。僕の中では『ミステリー・トレイン』で止まっていたからか。気丈だが大人の女を残した不思議な母親を、スッキリと演じていた。

ラストの詩「わたしが一番きれいだったとき」を詠むことは、二階堂の発案だったと新聞で読んだ。戦時であっても、1920になる頃の、ごくありふれたひとりの女であった女性の言葉は、黒いバックになっていっそう美しく響いた。

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