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2015.05.24 Sunday

「馬フンをさわれ」という豊かな体験

 

『馬フンをさわれ』

構成・編集・撮影:込山正徳 撮影:片岡高志 取材:澤裕之 若宮しのみ

協力:パカパカ塾

2015524日 14001455 フジテレビ「ザ・ノンフィクション」O.A

 同級生の込山くんから番組の告知がきていたので、先ほどまで観ていました。自分自身の体験など、いろんなことを思い出しながら観ていました。

 独自の教育理念を持ってそれを小学校の教師時代から実践してきた春日先生がこの物語の中心にあります。長野県伊那の小学校教員時代には、子どもたちと一緒に馬を飼いクラスで世話をするということを活動に組み入れていたそうです。当時の保護者の半数は成績が心配だということで反対し、半数は春日先生の方針に賛成していたそうです。退職後に「パカパカ塾」を開き、そこでも馬の世話をするという体験をつうじて「たくましく生きること」「自立すること」を子どもたちに伝えていこうとしています。番組では詳しく触れていませんが、NPO法人として運営しているようです。支援者と今後の塾のあり方(「閉鎖することもひとつの現実味である」と話していました。)を考えるシーンがありました。塾生が減少すれば当然運営費用に行き詰まることもあったでしょう。どのくらいに月謝なのかは具体的にはわかりませんし、卒業生なども寄付をしているかもしれませんね。

 『馬フンにさわれ』というのは象徴的なワンシーンです。集められたいくつかの馬フンを子どもたちに素手で触らせて、その団子ほどの大きさに糞を割ってみる。いきものの世話をするということは当然のように、糞尿の始末をし、その死にも立ち会うということです。また、種付けのシーンも印象的です。二頭のオスメスを柵の中に放って、交尾をするまでを見せる。残念ながら種付けは成功しなかったけれども、間近に見る動物が生きるための行為は衝撃的だったでしょうね。

 この物語は7年間の時間を持っているので、もう一人の中心は小学生で塾にやってきたヤンチャな少年です。父親の突然の死を受け入れることがなかなかできなかったといいます。一時期塾に現れなかった彼は、中学3年になってまた、塾に通い始め、最後には春日先生から手作りの卒業証書をもらいます。自分勝手で攻撃的で落ち着きのなかった少年が「卒業」するという、もうひとつの中心があります。新たに入塾した姉妹も、塾での活動で大きな変化があったようです。最長老の馬の世話を任されたその妹は、世話をした馬の最後にも立ち会います。

 この物語が描いているのは、信念を持った頑固な教育者と、たまたまその教育に触れた子どもたちの特別な体験だと思います。それがこの番組の問題提起だとも思うんです。特別な場所での特別な体験だけに終わらせてはいけない。視聴者が「こういう環境で子どもたちを育てられたらいいよね〜」で終わってしまってはならないと思いました。番組では触れていないけれども、この地域の雇用も限られているのだと思います。新規に移り住んできたとしても、十分な雇用がなければ生活ができない。新規就農にも様々な問題点があることも知っています。それでも、日本の各地にはこの地域と同じように豊かな自然環境があって、生き物の世話や農業などを体験できる土地はたくさんあるはずです。しかし、そこで体験学習や教育を行おうとすれば、運営に苦労する。生活や学校教育の一環ではなくて「特別な体験」だからです。どうすればもっと当たり前の体験になるのか? その体験を、成績の上下などよりも重要だと考えることが出来るのか? 地域創世などという言葉は、雇用の創出と教育理念の浸透がセットになるべき課題ですね。

 余談ですが、僕は幸いにして小学校時代を「田舎」で過ごしました。同級生の家で飼っている牛を見せてもらったり、養豚を営んでいた家では、子豚の出産や、豚の餌づくりを手伝ったこともあります。おじさんが牛の睾丸を指さして、「これも食べられるとよ」と教えてくれた時はショックでした。そういう体験は鮮明に、今でも覚えています。

 ありがとう込山くん、今回もいいものを観せていただきました。

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