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2015.03.12 Thursday

地域で子どもたちを育てるということ

『みんなの学校』

監督:真鍋俊永 出演:大空小学校 製作:関西テレビ

2014年 106分 BDDCP

http://minna-movie.com

 映画を観ながら、ときどき羽仁進さんの『教室の子どもたち』を思い出していた。現代版といえばあまりに陳腐な喩えだろうか? でも、子供たちの素直な日常がまっすぐに捉えられていると思った。もちろん先生たちの表情や仕草や言葉もそうだ。テレビ局が発信する映画はこれまでにも東海テレビや南海放送の優れたドキュメンタリーがあったが、この映画も地域に着目した秀作だ。

 4年生の4月に大空小学校に転校してきたセイシロウ君が、秋の運動会で走っている姿に、不覚にも涙が出てしまった。言うことを聞かないセイシロウは、木村泰子校長先生にたくさん怒られる。でも、校長先生は、「今日のことは、イチ、みんながセイシロウをいじめようと思っていた。二、みんながセイシロウと友だちになろうと思っていた。どっちや!」と問い詰める。セイシロウは二が答えだとわかっている。それでも上手に振る舞えないんだ。

 大空小学校が開校から2年目に転校してくることになったカズキは、評判の問題児だった。「カズキが行くなら大空には行かない方がいい」と噂されるほどの乱暴者は、朝寝坊を繰り返しながらも、担当の先生に起こされて一緒に学校に来る。「ここはみんなが安心できる場所や、信頼して」校長先生は彼に話しかける。同じく転校生のユズキも、すぐにキレる乱暴者だと前の学校での評判が悪かった。居場所がなかった子どもたちが、少しずつ馴染んでいく。

 この学校の校長室は「やり直しの部屋」になっている。何か問題を起こしても、校長室に来てどうすればいいかを考える。「◯◯くんに、こういって謝ってこい。ひとりでいけるか? だめだったらまた校長室に来なさい。」と木村校長は子どもたちを謝りに行かせる。何度も、また校長室に呼ばれる。そしてひとつずつやり直していく。

 セイシロウのお母さんの姿が、とても、印象的だ。前半では、セイシロウの登校時に途中まで見送りに来る遠目の姿だけが現れる。後半のインタビューで、「今までの学校では、家に帰ってくると、ランドセルの中身は綺麗なまま、鉛筆も使われないまま、クレヨンもまっさらだったんです。でも、いまは、上靴が汚れていて、一緒に洗ったり、ランドセルの中がグチャグチャだったり、クレヨンが使われていたり、それが、嬉しいんです」と語る。これまでの学校では、先生たちが気を使ってくれていたのだろう。帰り際にランドセルもきちんと整理されて帰ってきていたらしい。

 普通の子供達が普通にやって母親を困らせることが、セイシロウのお母さんには嬉しいのだという。たしかに、この映画に現れるセイシロウは、先生やクラスメイトを困らせる。学校から逃げ出そうとする。トモダチが迎えに行っても駄々をこねる。木村校長は、学校やクラスを信頼していないからだという。「学校やクラスを敵だと思っているんです」という。こんなふうに分析できる校長先生は、本当に凄い。

 運動会、修学旅行といった学校行事も、普通の学校の何倍も大変なんだろうなと思う。一般的には特別支援学校にいるだろうマアちゃんは、砂や水をやたらといじる。修学旅行でも、卒業写真の撮影でも。木村校長はその都度、根気強くマアちゃんの手を一緒に洗う。卒業式。木村校長は、言葉を話せないマアちゃんに「マアちゃんがこのクラスにいてくれたから、みんな優しくなった」と言って感謝する。

 本当に美しい映画だった。そして、子どもたちの教育現場は可能な限り少人数で、教員相互の顔がきちんと見えて、話し合える環境が必要なのだと思った。誰のせいにもしないこと。それが初等教育の基本なんだと思う。そしてそれが一番難しいことなんだ。


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