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2013.07.29 Monday

原発はこういう村を狙い撃ちしたのだと、あらためて思った

 『忘れられた土地』

監督:野田眞吉 撮影:高橋佑次 音楽:間宮芳生

1958年 30分 製作:東京フィルム *DVD上映

201377日 東京大学福武ホール

主催:東京大学大学院情報学環(記録映画アーカイブ・プロジェクト)

http://www.kirokueiga-archive.com/event/index.html

 

青森県東通村と言えば、現在は原発の村として知られている。この映画が撮影された尻労集落は、下北半島の北端に位置する。現在の地図で見ても映画で描かれた過酷な風土を想像することが出来る。

貴重な映画だと思った。日本で最も厳しいであろう寒村の、当時の暮らしが垣間見えただけでなく、東通村のHPを見ることで、明治初期の歴史と照らすことが出来た。この土地は、明治2年に「斗南」として旧会津藩の志士たちが藩の再興を誓って赴いた場所である。この文章を書いているのは2013729日で、NHKの大河ドラマ『八重の桜』は今週末の放送から会津藩士たちが斗南に向かう。1889年(明治22年)に町村制に移行し現在の青森県東通村となる。

この映画の制作年は1958年。東通村議会が原発の誘致を決めるのは19655月と記されている。この村になぜ原発が誘致されたのか? 映画の中にその理由がはっきりと描かれている。もちろん1958年の撮影当時は、まだ、原発の話は聞こえて来なかったのだろう。

映画の構成はロバート・フラハティーの『アラン』(1934年)のような印象を受けた。アイルランド西岸の孤島・アランで暮らす人々の過酷な生活を描いた作品だ。狭い耕作地で海藻を肥料にしながら痩せた土地を耕す様子が、『忘れられた土地』と二重写しになった気がした。

東通村の尻労集落も貧しい漁村だった。耕作地は乏しく、極寒の環境は作物には適さない。また、海岸は岩場と絶壁が多く海流の流れも早い。大きな港を作るのは困難な土地だった。小舟での沿岸漁には限界がある。やがて、沖合の漁場には南から船団がやってきて、規模の大きな漁業を行うようになる。浜から漁船団を見つめる尻労の漁民たち。漁協の協定や漁獲量の制限などが明確でなかった時代では、より多く獲ったものが勝者だった。もちろん日本国内の他の地区の船団だ。このシーンを見ながら、まるで、アフリカの西岸の漁民のようだと思った。ヨーロッパからやってきた大規模な漁船が底引き網で獲物をさらっていく。小舟でほそぼそと漁をする漁民たちの魚は残らない。壊滅的な被害と食糧難がそれに続く。

現在の地図でも、三菱マテリアル青森工場と、その少し南に日鉄鋼の営業所が確認できる。尻老集落の反対側、津軽海峡側に位置しているのは、この映画に出てきた、かつての石灰石の採掘場だ。石灰石が産出することがわかると、尻労の漁民たちも喜んだ。新たな雇用が見込まれるからだ。しかし、輸送用の大きな港が出来たのは反対側の海だった。山が切り開かれたのもその周辺だった。新たな雇用も生まれなかった。収入を補うためには、一年の大半を出稼ぎに出なければならない。その現実は改善される見込みが無い。貧しい村に、希望があるとすれば何かの公共事業だったのだろう。原発に付随する破格の交付金に頼ったことを、いま、責めることは出来ない。こういう場所に原発は出来たのだと納得する。

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