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2012.09.05 Wednesday

SVP2 3.11からの展望 ビデオと野菜 Video or Vegetable

 「真夏の無礼講2012」を終えて、マレーシアの友人シュウワイから依頼されていた文章を書きました。「3.11」短編作品集をマレーシアで発表してから、現在までの経過を佐藤博昭が、その後の展望を服部かつゆきが書きました。以下はその服部の文章です。「無礼講」の今後が楽しみになってきます。


SVP2 3.11からの展望 ビデオと野菜  Video or Vegetable 

東日本大震災から数ヶ月たった2011年の夏。第二回KLEXに向けて「3.11」プロジェクトを計画していた。同じ頃、東京から北に80キロ離れた郊外に小さな有機農園ができた。その農園主はかつてSVP2のメンバーであった。彼の名はオブチカズオという。彼は自分の農園をイムラボと名づけた。イムラボは「お腹いっぱい研究所」を隠喩する。オブチカズオは数年前に東京を離れ、日本とアジアの農園を巡り帰国し、実際に有機農家に1年住み込みで修行したのち、イムラボを開いた。開園の年は、大震災と福島の原子力発電所爆発事故として、日本の歴史に深く刻まれた。放射能被害に見舞われ、風評被害を被りながらも、今も彼は農園を続けている。

 

2012年8月18日。東京にイムラボの有機野菜の小さな市が立った。SVP2の主宰する「真夏の無礼講2012」でのことだ。我々としては、初めての生もの販売だったが、来場者から好評を得ただけでなく、SVP2と無礼講の今後のあり方に示唆的な出し物となった。

 

有機野菜はビデオと同じようにメッセージを伝える。オブチは自ら栽培した有機野菜を販売しただけではなかった。彼は元映像作家として「3.11」プロジェクトにも参加していたのだ。2011年の地震と福島第一の事故は、放射能による食物汚染の危機を私たちに再認識させた。農薬や化学肥料を使わずに、安全な食物を自ら育て提供することは、オブチの体からにじみ出てくる「3.11」プロジェクトへのメッセージでもあったと解釈できる。野菜栽培が映像表現と同じようにメッセージを持ちうること、この共通点はオブチにも我々にも盲点であった。そのためオブチの有機野菜は当日資料には明記されていない。

 

もちろん有機野菜栽培はいいことずくめではない。有機農法は農薬や化学肥料を使わず、昔ながらの方法で野菜を育てる。土と太陽と水だけでなく、家畜や農家や消費者までも含めた安全な循環を目指す。そのため機械化することが難しく、栽培に手間がかかる。台風などの水害や雨不足による干害、害虫や雑草など、自然と素手で格闘し続けなければならない。土壌を労わって連作も出来ない。栽培する種目は多いけれど、それぞれ収穫は少量だ。形も大きさも不揃いで、収穫と出荷に手間がかかる。生産量が少ないから、値段も高く、購入者を見つけることも難しい。有機野菜についてオブチが並べ立てた負の要素は、映像作家も自身の制作を通して共感できるだろう。そんな不自由に関わらず有機農業家も映像作家も日夜作り続ける。それは困難な行為そのものに、両者とも価値を見いだしているからに違いない。

 

美術館やギャラリーが扱わない、美的なものがこの世の中には沢山ある。YouTubeの時代のビデオアートも、AKB48の時代のロックンロールも、大規模農園による一極大量生産の時代の有機野菜も、そういったものの1つに数えたい。それらは媒体は異なるが作者の体からにじみ出てくる表現として共通の底辺で結ばれている。ビデオアートの上映会から始まった「無礼講」は今年で15年、17回目の開催となった。今この「無礼講」を再定義したいと、私は考えている。無礼講を、私たちにとって表現とはなにか、と媒体を問わず来場者全員に広く問いかける集まりとして再定義したい。そして、その表現の底辺を国内外を問わず広げてゆきたい。有機野菜をきっかけにSVP2の進む路が、田んぼの畦のように現れた。オブチカズオに感謝をしたい。(Spread Video/Vegetable Art Project 2 服部かつゆき)

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