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2011.03.06 Sunday

第19回アースビジョン 地球環境映像祭

 グループ現代の川井田さんからの案内状に興味深いタイトルの作品があった。
『未来への診断書ー水俣病と原田正純の50年』(2010年 54分)はKTT(熊本県民テレビ)が制作したドキュメンタリーだった。作者の安松直朗さんは1978年生まれだ。2001年に熊本県民テレビに入社して2003年から報道部の記者になり、水俣問題を担当してきたのだという。熊本県はこの県民テレビを始め、地道な水俣取材が続けられていて、これまでにも何作品かを見てきた。このところ関係が遠くなっているが、「地方の時代映像祭」でも力強い水俣取材の成果を見てきた。
原田正純さんとは一度だけお会いしたことがある。チッソ水俣工場の第一組合解散式でのことだった。叔父が最後の書記長となり、同期入社の六名が次々に定年退職となる2003年の春だった。原田先生の姿を見た時に、これまで何度も土本作品やTVドキュメンタリーで見ていた「本物」の姿に興奮した。その後、川井田さんにあった時に、「原田先生のドキュメンタリーを作りたいですね」と話したことを思い出した。簡単にはいかないことは承知だったが、自分ではなくとも、誰かが何とかその仕事を映像で残さなければならない人だと思っていた。チッソ第一組合が使っていた事務所は、その後会社に返され、資料の類は原田先生の熊本学園大学が水俣病の研究施設で引き取ったという。その施設も、このドキュメンタリーのなかで見ることが出来た。
作者の安松さんのように、事件が起こってから50年後に取材に取り組む人がいることは心強い。しかし、安松さんはこの春から東京支社の営業部に配置転換になったらしい。後進に引き継いだとは話していたものの、この種の話題が若い人にどれだけ訴求力があるのかは判らない。
原田正純さんの仕事とは、言うまでもなく水俣病について井戸を掘り、種を蒔き、少しづつ収穫するような、ライフワークである。その生活のほとんどが水俣病との関わりであったことは、著作を辿れば想像できる。なかでも『水俣学講義』のシリーズは圧巻だ。水俣病が「学」となりうることは、病をめぐる複雑な関係がまさに日本の縮図であったことからも理解できる。医学として、社会学として、あるいは環境学として、多くの負の遺産を残している。
作品上映後の質疑で、安松さんの「被害者であり、加害者であった〜」という発言に、会場から言葉の使い方に注意を促す発言があった。簡単に使った言葉ではなかったと信じたい。患者やが加害者でありうる可能性とは、チッソ城下町であった水俣の性格を示しているだけでなく、緒方正人さんの著作にもあるとおり「私がチッソであった」ということだろう。この言葉を正確に理解することは、当の患者や以外は不可能であろう。それでも想像力はある。患者やとしての申請を取り下げた緒方さんは、支援団体との関係もこじれたはずだ。まさにそうした人間関係、社会的な力のバランスが、事件をさらに複雑なものにした。それは、行政主催のものとは別に、患者主体で行われている毎年の慰霊祭にも現れている。
本当に「水俣病は終わっていない」のだと思う。

ところで、原田さんがカナダに検診に行くシーンで、車の後部座席に大類義さんがいるのを発見した。大類さんは、僕が日大映画学科の研究室につとめていた頃の上司だった。1987年の土本さんの作品上映会の仕事をするなど、その前後から土本さんと交流し、ドキュメンタリーについていろいろなことを教えてくれた。大類さんがこの頃こうした研究をしていたため、多くのドキュメンタリー映画をフィルムで見ることも出来た。
大類さんは奥さんと一緒にカナダに住んでいる。もう20年くらいになるだろう。そこでの活動については、実は多くのことを知らなかった。今回のドキュメンタリーでは、現地のコーディネイトや診察時の通訳などをしているようだった。水俣通じて、ずっと繋がっているのだな、と思った。

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