<< ブラウンシュウ゛ァイグ国際映画祭 その1 | main | アフガニスタン映画祭 >>
2005.11.28 Monday

ブラウンシュウ゛ァイグ国際映画祭 その2

Internationales Filmfest Braunschweig
8. - 13. November 2005

この映画祭、いわゆる劇場長編映画から短編映画まで、様々な作品を上映するが、特徴としては音楽と映画の関係に焦点を当てたプログラムがあること。これはプログラムディレクターのVolker Kufahl氏も、今年はいいプログラムが組めたんで我々としても自慢できるところなんです、とニコニコしながら語っていた。具体的にはMusic & FilmというテーマのショートフィルムコンペティションLeoや映画「ムーラン・ルージュ」などの音楽を手掛けた作曲家のCraig Armstrongの特集、そして映画音楽の重要性と若手の映画監督や音楽監督に映画祭はどのような可能性を与えることができるかというテーマにおけるディスカッションなどなど。ちなみにこの映画祭のコンペティションについては、もうひとつフィーチャーフィルムの部門があるが、こちらはヨーロッパ映画が対象とのこと。しかし先のコンペLeoについてはどの国でも対象になるとのことで、アジアからももちろんOK。興味のある方、次回挑戦してはいかがでしょうか?

さて今回見たこのLeoプログラム、後半についてはなんとDVDの上映トラブルにて4作品が上映できなくなるというハプニングがあったものの、概して見応えのある作品が集まっていた。その中で賞を取ったのは自動車事故の記憶をテーマに描かれた抽象的なCGとエクスペリメンタルな音楽が絡み合う「_GRAU」、3つの異なる時空間がマルチで並べられ、それぞれの中で子供たちが立てる音をミックスさせた「QUIETSCH」はよくできた作品であるものの、個人的な評価としてはいまいち。賞を穫れるほどの印象はなかった。代わりに、究極を追求する芸術表現の残酷さと体制の恐怖と悲しさを見事な質感のCGアニメで描いた「Fallen Art」や、アパートの住民の人間関係を絶妙なギャグセンスで描いたこれもアニメ作品「FLAT LIFE」などは、確かにMusic & Filmという点を満たしつつもその点においては受賞作品になるほどの理由がなかったのかもしれないが、その作品が語る物語性としてはいい作品を見ることができた、と満足できたと言っておく。これはおそらくアヌシーなど、別のアニメーションフェスティバルや短編映画祭でも見ることができるのでは?その他個人的に気が付いたことといえば、「ONE YEAR IN PARADISE」。森の中の季節の移り変わりをハイスピード撮影で記録したこの作品、なんとなく覚えがあるなあと思って作者名を見たら、確かに覚えがあった。このThomas Vespermann氏は、数年前に東京ビデオフェスティバルにて、このショートバージョンで入賞していたのだった。ということはいよいよこれがその集大成版か?尺も6分ほどだったから、これも次回の東京でお目見えするかも。なにげに世界は狭いのだ。

さて賞や映画祭側のセレクションの意図とは別として、個人的なコメントを見たものに関してざっと述べていくならば、コンペとは別のショートフィルムプログラム。私自身はもともとショートフィルムやビデオアートに主に興味があるからここは必ずと思ってチェックしたのだが、残念ながらこれは?外れだった…。上映された7作品はいわゆるドラマがほとんど。様々な人間関係を短時間で表現しようと構成をまとめていく力は確かにあるものの、どうも尻切れとんぼが多すぎる。それをよしとする手法もあるのはわかるが、ここで見たものはその手法にも達していない。これはいったいどういう意図でセレクトされたんだろうと思って後でカタログを見れば、各地の映画祭で賞を穫るなどした作品を選出したとのこと。ええ!?これで賞を穫ってきただって?とするとそこから見えてくるのを今のショートフィルムの状況とするのなら、近年のショートフィルムブームに対してレベルは貧困と言えてしまうかも。とほほ。でもこれは映画表現の話だけでないのかも。どの表現ジャンルにおいてもこのところ垣間見える、ある種の諦観をよしとする感覚が漂っている。それが今の状況なんだという意見があるのもわかるけど、ほぼ同世代にいる私としてもこういうのはある種のスノビズムに思えてあまり好きではない。唯一、庭の池を境に地上と水中の世界が交差する、なんともくだらないコマ撮りアニメを見て大いに笑えたことに救われた。この行き詰まった状況をブレイクスルーするためには諦観じゃなくて、勢いのある馬鹿馬鹿しさなのかも。と、プログラムの最後はそんなことを考え始めてしまい、上映がやっと終わって腰が痛いと立ち上がって両隣りを見れば、友人とステイ先のホストがぐったりしていた。ダメ映画を見てエネルギーを奪われた、とげっそりする友人と無言のホストに私は言う。ショートフィルムを見るにはエネルギーが必要なのよねっ。いつも思うことだが、ある程度目星をつけて映画館に映画を見にいくのと、同じ映像作品でたとえ時間が短くても、何も知らない作品と対峙するのは本当に体力も気力も必要なことなのだ。だから外れの作品に当たると、尚更どっと疲れてしまう。

さてその他今回の映画祭では、旧社会主義圏のSF映画特集というのがあって、これもなかなか面白かった。残念ながらレクチャーなどは全て独語。共産主義崩壊以前にDEFAなどに代表される映画製作で作られた作品がどのような意図で作られていたのか、それがどういった表現の中で見ることができるか、など、興味深いテーマ。私が見た作品「DER SCHWEIGENDE STERN」(1959年)は、金星探索に向かうソ連の探査機に乗り込む宇宙飛行士達の話なのだが、各国の科学者が結集した国際的プロジェクトという話の流れといい、そして報道関係者の中でカメラマンがタイトスカートを履いた女性だったりと、当時の国際関係や社会状況に細かく気を配る演出は、社会主義国ならではなのかもしれないと思ってみたりする。

このブラウンシュヴァイグの映画祭、こうしたいわゆるマイナーシーンの映像作品を取り上げつつも、一方でオープニングの映画が「グッバイ!レーニン」で一躍名を揚げたダニエル・ブリューエルやいまやハリウッド女優であるダイアン・クルーガー出演の新作「Merry Christmas」であったり、インターナショナルの新作映画ではミヒャエル・ハネケやアトム・エゴヤンの作品を、またナターシャ・レニエへのオマージュ特集を組んだりと、一般公開の劇場映画も取り入れているところは、例えばオーバーハウゼンやハンブルグの映画祭とはまた違った方向性だ。映画祭としての方向性を少し曖昧に感じる一方、この手のイベントへ、いわゆる映画マニアだけでなく一般市民の興味を引き寄せて、地元に根付かせる意図もあるのではとも思う。だからとはいえ、ハリウッド系のメジャーフィルムを取り上げるのではなく(とするとCraig Armstrong特集の「ムーラン・ルージュ」はどうなのかと疑問はあるが)、そこはEUのメディアプログラムの支援を受けているから推していくのは当然欧州を主とした作品だ。このEUのメディアプログラムの映画祭に対する支援には条件があって、映画祭内で上映する作品の70%以上が欧州のものでなければならない。ゆえに、それではInternationalと呼べなくなってしまうといって反発の声も当然ある。この声についてはまた後に報告したいと思うけれど、こうした条件を与えた結果、欧州内全体での作品のレベルが下がるのは確実だ。国際映画祭を開く目的は国際交流などの為だけではない。様々な表現や視野を見せあうことによって、各国互いの作家同士が切磋琢磨される。例えある年に欧州の作家ではなく、アジアやアフリカの作家が賞を総なめにしたとしても、それが現状というものであり、それによって欧州の作家レベルもその後確実に上がるはずだ。こうした長期的展望を持った文化政策を取ってきたドイツのはずだと思うのだが、この話に代表されるよう、近年徐々に状況は変わりつつあるようで。その辺りもこれからまた探っていきたいところだ。

と、話がずれたがまとめると、今回の映画祭は映画啓蒙のためというよりは、市民のイベントといった気軽さが感じられた。良くいえばそれは地元に根付いているということでもあるし、悪くいえば、どういった映画を見せていきたいのか、「musik & film」というテーマがありながらもその辺りは少し焦点がぼけていた感があった。それでもショートフィルムのプログラムを組むこと、そしてショートフィルムをフィーチャーフィルムの前座に組み込むなど、多くの人に多様なジャンルを見せようとしている工夫や努力は確かに感じられた。そうじゃなきゃ、19年間こんな大きなイベントを毎年続けられなんてしないよね。
コメント
コメントする








 
この記事のトラックバックURL
トラックバック
Calendar
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< June 2018 >>
翻訳ツール
Facebook svp2ページ 更新情報
Selected Entries
Categories
Archives
Recent Comment
Recent Trackback
Recommend
戦うビデオカメラ―アクティビズムから映像教育まで
戦うビデオカメラ―アクティビズムから映像教育まで (JUGEMレビュー »)
佐藤 博昭
佐藤博昭、渾身の一冊です。個人映像の展開へのヒントになれば…。
Recommend
シリーズ 日本のドキュメンタリー (全5巻) 第1回 第1巻 ドキュメンタリーの魅力
シリーズ 日本のドキュメンタリー (全5巻) 第1回 第1巻 ドキュメンタリーの魅力 (JUGEMレビュー »)
佐藤 忠男,吉岡 忍,森 まゆみ,池内 了,堀田 泰寛,小泉 修吉,矢野 和之,佐藤 博昭
Recommend
Recommend
映画は世界を記録する ドキュメンタリー再考(日本映画史叢書 5)
映画は世界を記録する ドキュメンタリー再考(日本映画史叢書 5) (JUGEMレビュー »)

佐藤博昭が「ビデオ・ジャーナリズムの現在」の項を担当しています。
Recommend
スーパー・アヴァンギャルド映像術―個人映画からメディア・アートまで
スーパー・アヴァンギャルド映像術―個人映画からメディア・アートまで (JUGEMレビュー »)
佐藤 博昭, 西村 智弘, 「Cine Lesson」編集部
SVP2を主催する佐藤博昭の共著本。
Links
Profile
Search this site.
Others
Mobile
qrcode
Powered by
30days Album
無料ブログ作成サービス JUGEM