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2005.11.07 Monday

人と人が巡り会う場所-山形国際ドキュメンタリー映画祭2005

山形に行くのも今回で4度目になった。2年が経つのはけっこう早いもので、さあ今年は山形があるなあ、と年明けに思い、春を過ぎた頃にはもうすぐ山形がやってくるなあと思い、夏が終わる頃にはあれもうすぐかと慌てて宿の手配なんかをする。YIDFF(山形国際ドキュメンタリー映画祭)は私にとって、初めての映画祭体験だった。学生の頃、お金も時間も余裕がなかった私は先輩たちが連れ立って出かけていくのを少し寂しい思いで見ていた。だからその2年後に初めて出かけたときは、もう嬉しくてたまらかなったのだ。大人の世界に少し踏み込んだような、そんな気分だったのだ。でもそれは序の口。朝から晩まで会場間を駆け回り、夜は香味庵で人々と出会い、そしてその後は知り合いたちとじっくり飲んだ。学生時代、体育会系とは全く縁を持とうとしなかった私が、ある種の映画合宿体験にここではまってしまったのだ。

そう、映画の合宿。ここで私は毎回たくさんのことを学ぶ。
ドキュメンタリーというジャンルの幅の広さ、刺激的な表現、そしてそういった様々な試みを受け入れるこの映画祭の懐の深さ。映画そのものについて、または映画を通して見える様々な世界について知る。そしてそこに集まる人々を知る。この映画祭に来ると私はいつも勇気づけられる。互いの表現やテーマは違えど、ここに集まってくる人々、作家も観客も、皆似たような境遇にいて、そして皆それぞれ、様々な方法で映画というものに関わりながら生きているそのことに、私は励まされる。

それから山形という土地のこと。
山形以外の場所でも映画祭はもちろん開催できる。でも私は山形にこの映画祭があってよかったとつくづく思う。
知り合いたちと映画から政治経済、社会情勢や恋愛まで語り合う場には、おいしい酒と芋煮が必要だ。ずっしりと重い映画に向き合って疲れたら、温泉へ行くのもいい。会場間を駆け回ってお腹が空いたら、山盛りの板蕎麦とゲソ天を頼む。せっかくだから土産でも、と、町中のデパートに入って味噌の紫蘇巻きを買えば、どっからきたの?来年は来ないの?とおばさんが声をかけてくれる。そう、土産にはゆべしなんかも名物だけど、地元のスーパーで買う地物の舞茸やら菊やら山菜やらは東京ではお目にかかれない。友人や家族へと持ち帰れば、それらを料ってつつきながら映画の話もできるだろう。映画を含め芸術には、日常の事柄を楽しむ余裕も必要なのだ。個人的見解として常々、食について関心がない人は感性が鈍いと思っている。私の知る限り、山形に集まる人々は、皆この豊かな風土を映画とともに味わっている。だから、ぜひ山形市にはこの映画祭を止めようなんていうことはしていただきたくない。一部の映画好きのためのイベントに財政を投入する必要はないといった声があるようだが、この映画祭から山形の風土や文化は確実に伝わっていることを知っていただきたい。

映画祭はまず第一に映画を紹介するものだ。それは確かに作家たちへのチャンスとなるだろう。けれども忘れてはいけないのは、同等に重要な存在として観客がいることで、それは観客にとって新たな映画との出会いを作る場でもある。そしてやはり同等に、いやもしかしたらこれが一番なのかもしれない。映画祭は単なる上映の場所ではない。映画というものを通して、人と人が出会うための場であるのだ。
YIDFFはドキュメンタリー、もしくは映画という領域において、日本のみならず、世界においても大きな功績を残し続けてきていると思うけれど、その規模だけではなく、語られなければならないのはその作家と観客へ同時に機会を与えることであり、そうした意味では日本各地にも大小様々な映画祭があれど、YIDFFがそれらの映画祭と確実に違うのは、作り手に機会を与えるためと明言する映画祭ではなく、人と人が映画を通して出会う場だと言っていることである。だからこそ、作家本人またはその知り合いだけが集まる映画祭ではなく、市内外一般の人も、投票券を握って会場を埋めていくのだ。

どんなジャンルでも映画好きなら、一度は旅行でも兼ねるつもりでYIDFFに足を運んでみるといい。
病みつきになること請け合いだ。様々な人たちと巡り会えることに。私自身はこの数年間で、山形で様々な人々に、映画に出会えたことに心底感謝している。そういえば、YIDFFが近付く頃、出会う人々とはいつもこんな言葉を交わす。それじゃあ次は、山形で!
そうまた2年後、山形で!yidff night
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